先日、コンピューターソフトウェア倫理機構(ソフ倫)が凌辱ゲームの取り扱いを新基準を持って自主規制をする、と発表したことについて、業界の片隅で飯を食ってる身として、意見を言わないわけにはいかないので発言します。今日はだらだらと長いですが、お付き合い下さい。
まず、この問題について発言するにあたって、先に言わなければならないのは、次の2点。
<ああかむ>は、ソフ倫にも、メディ倫にも、その他の組織/団体にも加盟していない立場である、という事。
もう一つ。私は、ソフ倫やメディ倫の設立目的に、反発する者ではありません。むしろ、それらは業界にとって必要な組織であると考えています。
ソフ倫加盟各社のお立場を否定するつもりは全くありませんし、自主規制する事が間違っているとは、全く思いません。今回、ソフ倫が凌辱ゲーム描写について自主規制を定めたのは妥当な行動だと思いますし、そのご判断を理解します。
さて、今回の自主規制に関して、私がホッとしているのは、このブログにコメントを下さったwing-tailさんのように「この問題ってちょっと変じゃないの?」と疑問の声を上げて下さった方々が、数多くいらっしゃる、という事でした。
ちょっと話はズレますが―――
「天皇機関説事件」と言うものを、ご存じでしょうか?
中学校の社会科の時間で必ず出てくる話なので、耳にしたことはあるかと思います。
あらすじを言えば、当時議員だった美濃部教授が主張していた政治主権に関する学術的論文をつまみ食いして、反対議員が政争の道具に使ったのです。その尻馬に乗っかる連中がワラワラ出てきて、大問題に発展した。新聞でそれを読んだ市民の多くは、その学術的内容を知りませんでした(あるいは理解できなかった)。彼らが思ったのは「天皇陛下を機関車呼ばわりするとはなんと不敬な!」という怒りだけです。その怒りも、単なる思い違いです。学のある人は―――昭和天皇ご自身を含めて―――天皇機関説が妥当な学説だという事を解っていました。だから、いったんは不敬罪で起訴された美濃部教授は、結局は不起訴処分となります。しかし、世間の白眼視だけは元に戻らなかった・・・。
これは、80年ほど前に起こった事件です。
歴史は繰り返すと言いますが、80年周期ぐらいで時代が似通ってくる傾向が見られるようで(今年は、世界恐慌からちょうど80年目にあたります)、昭和10年前後からの国体明徴運動のように、平成20年〜25年あたりで、言論統制に似た社会的風潮が強くなるだろうと私は予想しています。それを見越して、手を打たねばと思っていたら、いち早く今回の自主規制のニュースが現れて、おいおいちょっと早いよ、と焦りました。
しかし、「天皇機関説事件」の時とは違い、今回は「この問題は論点がおかしい!」と声を上げる人が沢山居てくれました。この事は、とても心強い事実です。
話を戻しまして―――
今回の自主規制については、ショップ側、つまり、販売・流通側の都合が大きい、と言うことです。
自主規制を決めた団体、コンピューターソフトウェア倫理機構(ソフ倫)は、そもそもの設立経緯からしても、販売・流通のための組織です。他の組織/団体――メディ倫もCESAも、同様です。それらは、<国際ペンクラブ/日本ペンクラブ>のように、表現の自由や制作者の権利を守るために作られた組織ではありません。ですから、その様な団体に「表現の自由を守れ!」と望むのは、酷と言うべきでしょう。
では、ゲーム制作者の一人として、ペンクラブのような、「表現の自由と作者の権利を守る事を目的とする」団体を立ち上げるべきではないかと思います。その必要性は感じているのですが、じゃあ、と言って手を挙げないのは、確かに、制作者側が怠惰の誹りを受けても仕方がありません。
うーん、これを言っちゃうと身も蓋もないのですが・・・・・・こんな機会ですから、ここで業界人として一番みんなが言いにくい事を言いましょう。
どうして、エロゲ制作者は自分たちの表現の自由の為に立ち上がらないのか?と問われれば「エロゲを作るのは、己の表現は二の次で、まずは己の飯の為だから」です。
エロゲーは、儲からないまでも、人並みに食ってくことができる仕事だから、この業界に多くの人材が入ってきたのです。
だから、名誉を感じてエロゲーを作っている人は一人も居ません。プライドを持ってエロゲーを作ってる人たちは、それなりに居ます。でも、プライドを持っている人達の中でも、世間に「私はエロゲ作家です」ってアピールする人は居ません。私自身の話ですが―――今までいくつかお見合い話が持ち込まれましたが(こんな私にもそんな経験はあるんだよ!)、その都度「お仕事は?」と聞かれて「エロゲ作家です」と正直に答えたこと一回もありません。
これが、小説家だったり漫画家だったら、「私はちょっとした作家でしてね・・・」なんて偉そうに胸張って答えたでしょう。
自分の仕事に誇りが持てない、って事じゃありませんが、俺のこの誇りは世間にはわかってもらえない、とは思っています。
・・・・・・ああ、身も蓋も無いこと書いちゃった。
そんなわけですから、エロゲー制作者サイドから「表現の自由を守る為に団体を立ち上げよう!」なんて動きが出るなんてことは、まあ、期待しないで下さい。私自身、そう言う組織を作らなきゃいけないなと思っていながら、ぐだぐだサボっては、なかなか重い腰を上げていません。
「じゃあお前は、ジワジワと規制で締め付けられていくこの状況を、甘んじて受入れるつもりなのか?」と問われれば、そんな状況を諦めて受入れるつもりなんて、全くありません。
エロゲー制作者・関戸ゆいぎとして具体的に行う行動は、以下の4つの順序で行います。
1)選挙に行って投票する
まともなことを言い、まともなことができる人を、政策決定できる場所に送ります。
はっきり言って、こういった問題の解決について、具体的かつ一番直接的に効果があるのは、この選挙への一票という行為です。特に、日本の若年層は、選挙への関心が薄すぎる(今、投票率が三割を切っている)。今回の件に限らず、若者の八割が投票に行けば、必ず問題は解決します。
2)規制の枠内で工夫して、表現を拡大していく。
規制があっても、その中で反骨精神を持って制作していく
その為には、既存の権威を上手く利用するってのもアリです。例えば、シェイクスピアの原作を忠実にゲーム化する、とかね。
と、ここまでは、ソフ倫加盟/非加盟を問わずできる行動です。
それでも、状況が好転しなければ、次の行動は―――
3)自社ショップで販売活動
どこのショップも扱ってくれないなら、自分で売るぞ!という事ですね。
その為には、ユーザーさんが買ってくれなきゃ成り立たないわけです。
だから、Winnyとかコピーとか、違法ダウンロードしないでね。
4)アンダーグラウンドで抵抗活動
もう、これは損得無視で、表現の自由のため、己の尊厳のために立つ時、最後の手段です。
ただし、長期的な活動は無理です。せいぜい頑張って、3年も続けられないでしょう。その間に、元に戻れば良いのですが・・・。
4番目の手を取らなきゃならない事態になったら、それは、本当に日本が間違った時代に入ってしまったという証拠でもあります。それがどんな時代であるかは、80年前を回想すればお分かりの通りです・・・・・・
さて、最後に。
私から、ユーザーさんにお願いしたいのは、以下の3つです。
この規制に反発を感じる方々のご賛同をお待ちしています。
1)選挙投票に行って下さい
エロゲをプレイしていると言うことは、あなたには選挙権があるはずです。まだ18歳の人も、2年後には選挙権を持ちます。それを使って下さい。
「いまさら選挙に行っても、何も変わんねーよ」なんてすねて、権利を放棄する者に、己の権利を主張する資格無し!
2)商品を購入して下さい
資金が無ければ、運動は継続しません。
3)応援して下さい
愛がなければ、運動は虚しいだけです・・・
今や伝統芸能として地位を築いた歌舞伎も、幕府の禁令をくぐり抜けてきた歴史があります。
近松門左衛門の心中物も、忠臣蔵も、何度も政府からの上演禁止令を食らっては、また復活するというイタチごっこを繰り返して、したたかに生き延びてきました。
どうしてそれが現代まで生き残っているかと言えば、お客さんの根強い人気が途切れなかったからです。
「愛は全てを救う」という言葉には欺瞞が多く含まれていますが、少なくとも「愛(人気)は作品を救う」のは、本当です。
以上、長々と拙文にお付き合い下さり、ありがとうございました。
2009年06月05日
この記事へのトラックバックURL
http://blog.sakura.ne.jp/tb/29599519
※ブログオーナーが承認したトラックバックのみ表示されます。
この記事へのトラックバック
http://blog.sakura.ne.jp/tb/29599519
※ブログオーナーが承認したトラックバックのみ表示されます。
この記事へのトラックバック
以前から、選挙に行かないなんてありえないと思っていましたが、益々もって、行かなければならないと決意する次第です。
また、貧しいながらも今以上に商品購入していきたいです。
今回はこれにて失礼します。
それでは、また。ああかむさんのご長栄を願っております。
ご意見、拝見しました。
オタクという人種は
好きなもの、良いと思うものには
情熱やお金を惜しまない、と何処かで読みました。
賛成できる面もあります。
個人的にお金には限度がありますが
(和風々々シリーズしか持っていません)
応援はさせて頂きます。
資金的には微々たる以前のレベルでしかなく
愛情も充分とはいえませんが
作品及びまきいづみさんへの愛情を持ってゲーム製作されていると信じている俺にも出来る限りの支援をしていきたいと思っています
(「15歳」「お嬢様シリーズ」しかまだ持ってませんが)