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ああかむゲーム制作日記

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2008年06月14日

秋葉原通り魔事件についてゲーム制作者の責任

 事件の余熱が醒めない内に、こんな事を書くのはどうかとも思うのですが・・・
 去る2008年6月8日に秋葉原の歩行者天国で発生した通り魔殺人事件について、ちょっとだけ触れたいと思います。

 まず、この事件は、私にとって非常に身近な衝撃を受けた事件でした。1995年のオウム真理教のサリン事件以来の衝撃でした。自分の身近な行動範囲内に、凶悪事件が入り込むという事実は、常にその危険性を想像していても、やはり衝撃的です。

 犯人がゲーム・アニメ好きであったのは事実なようで、もしかしたら、自分が関わった事のあるゲームを、彼がプレイしていたかも知れません。

 事件の後で「ゲームやアニメやマンガが、彼に影響を与えたと思いませんか?」という趣旨の発言が、いくつか出てきました。それについて、制作者の端くれとして、何か思うところは無いかと問われれば、私には忸怩たる思いがあります。
諸先輩の方々を差し置いて、僭越ながら心情を吐露させていただければ、
皆さんがおっしゃるのとは逆に―――私は、ゲームやアニメやマンガが、彼に影響を与えられなかった無力さに自分の責任を痛感しています。

 フィクションは、結局、彼の犯行を抑えることが出来なかった―――それだけの影響力を持てなかったのです。

 エンタテイメントの基本は、勧善懲悪です。これは、アダルト作品の凌辱モノであってさえ、そうです。
善と悪は対立し、一旦は悪が善を凌ぐが、最終的には、悪は善の前に打ちのめされて滅びます。
 それは、古今東西普遍にして不変な、フィクションの基本形です。いや、むしろ、フィクションとは、「悪は善に滅ぼされる」という<妄想>を広める為に発達してきたのです。

 世の中の現実は、過酷で無慈悲です。
 弱者が虐げられ、貧乏人が金持ちにさらに搾取され、罪の無い人が悪意ある者に殺されます。
だからこそ、人は魂の安寧を求めて、フィクションを作り上げます。

 なのに、この犯人にとって、フィクションは何の慰めにもならず、ゲームやアニメは彼に何の影響も与える事が出来なかった。彼の凶悪な行動を押し止めるだけの<力>を、僕らのゲームやアニメは持てなかった―――これが、私が今痛感している自らの責任です。
 もっと力を持ったフィクションなら、彼の凶行を押し止められただろうか?
 ドストエフスキーの作品なら、彼の犯行を押し止める事が出来ただろうか? イエスの聖書なら? 論語なら? 法華経なら? マルクスの共産党宣言なら? あの犯人が、これらを読んでいたかどうかは解りません。

 なお、私が知る限り、フィクションが現実の犯行に影響を与えた事が明確な事例は、1980年に東海地方で発生した女子大生誘拐殺人事件で、身代金の受け渡し方法について犯人が「黒澤明の映画『天国と地獄』を見て真似をした」と自供した例ぐらいです。

 一方で、新聞・テレビの報道機関の影響力って凄いなぁと思ったのは、先の硫化水素の自殺事件。ネットで手口が広まっている間は、知る人ぞ知る、という程度の手口だったのが、マスコミ報道された途端に、一気に手口が広まって、巻き添えをくう被害者まで続出する事になりました。

 フィクションは、現実の圧倒的な力の前に、依然無力です。
 だから、僕ら制作者は、もっと本気になって、力いっぱい絵空事を語り、世の人たちに少しでも影響を与えねばならない―――と思うのです。


 今回は、湿っぽい話になってしまい、すいませんでした。
 最後になりましたが、犠牲になった方々と、ご遺族の皆さん、あの日あの場所にいた皆さんに深くお悼み申し上げます―――
posted by ああかむにっき at 04:50| Comment(9) | TrackBack(0) | 業務日誌(シナリオ担当:関戸ゆいぎ)
この記事へのコメント
管理人様
マスコミは、誰かの責任にしたいのですしょうね。いつでもマスコミは面白おかしく記事が書ければ、その影響がどうなるのか、そんなの関係ねぇ〜〜ですからね。
ロリ系サイトが規制され、次は拷問系のサイトも規制されるのでは・・・とヒヤヒヤしています。
いずれにしても文明が発展し取り巻く環境が変わり、絵空事と現実の区別がつかなくなった人たちが増えたと言うことなのでしょうか?

今回の犯罪を真摯に受け止めて考察された管理人様は立派だと思います。

今回、被害にあわれた方々のご冥福をお祈り申し上げます。
Posted by どり at 2008年06月14日 11:13
まずは亡くなった方々のご冥福を祈りつつ。

私個人といたしましては、ああいったワイドショーなどで、ゲームとマンガ・アニメと、その他ドラマや映画・小説が線引きされているのが一番不可解ですが。
私なら
・ゲーム(ただしジャンルでさらに細分。モノによっては下記に組み込める)
・マンガ
・映像作品
・小説
かなぁ。

ゆいぎさんの話とはずれますけれど、
「影響」と言うのは「相互作用」であって、つまり受ける側によって起こる「影響」が変わるわけです。

3年B組を観て教師を目指す人もいるでしょう。
あるいは戦隊モノを観て、戦闘員の真似をする人もいるでしょう。


何にしても、フィクションが好物の私にとっては、こういった事件でフィクションが萎縮してしまうのは嫌なものです。
ぜひ力いっぱい絵空事をしてください。
Posted by 第二波 at 2008年06月20日 09:08
「ゲームやアニメやマンガが、彼に影響を与えられなかった無力さに自分の責任を痛感しています」
凄く、心に沁みました。

自分も物作り側としていつも好き勝手考えずにやってたけど・・・
誰か一人の心に何か残せる人になりたいと思いました。

そんな関戸さんが作る作品だからこそ、私も心に響いて色々と考えさせられたり。
これからの作品もそういう点で期待しています。
あ・・・くのいちですが是非是非、パッケージ版希望!です。
きっと希望者は多いと思います!!!
Posted by めぐみん at 2008年06月21日 00:27
勧善懲悪
愛や義は深すぎれば不善を為すが罰するには忍びないものもある・・・どうしたものか・・
義なんかは自分も引きづられそうで・・・
Posted by at 2008年07月02日 12:19
『カラスは黒いという命題をくつがえすには
何千何万何億の中に
たった一羽 白い翼のものがいればよい』

ttp://asame8.web.infoseek.co.jp/cmpof1.html
Posted by at 2008年07月12日 03:32
個人的にはエヴァがどんな影響を与えたか気になります。

あの世代は多かれ少なかれあの話の影響を受けていますから、そのことの言及がどこにもなかったことがきになるんですよ。

まじめな話、昨今の自殺率にも影響がある作品だと、以前アトランティック・マンスリーというアメの有名な雑誌で、日本の自殺を追い掛けていた向こうのジャーナリストが特集記事に書いていたそうです。
監督に話しを聞こうとして断られたが、日本の若者の厭世的な空気の蔓延とあの作品には明らかな因果関係があるとしていました。

正直、もっと創作物で彼を食い止められなかったという意見は他でも見ましたが、むしろあの作品のような、負の可能性を作った作品などもあったのではないかという考えもあるではないかと思います。
数年前までの、萌え系を除くオタ作品の陰鬱さは
とてもじゃないが人に元気を与えるようなものではなかったですし、その手の作り手のエゴを読み手に伝染させられてトラウマになるのは、日本が元気だった数十年前から、いわば伝統にもなっていたこともあわせて、考えられてもよいではと。
Posted by ma−toru at 2008年07月13日 04:40
二十歳過ぎてから「マンガや小説の価値観は、作者の理想で現実じゃない!」と言うことに、やっとの事で気がついた…のを思い出しました。
だけど、そのまま気がつかないで、歳を重ねているひとは、世の中にけっこう多そうだなぁ。
うちの親とか。
Posted by ZONKO at 2008年07月14日 00:53
ちょっと考え杉かと思う。
やる奴はやるし、やらない奴はやらない。
つまり自分の不満を他人にぶつける最低な事を
するかどうかの違いだと思う。

マスコミなんて何かにつけて理由が欲しいのですよ。
世の中そんなに割り切って物事が動いているわけじゃない。
漫画や映画やゲームやドラマなど影響を受けるなと言うのは無理な話。
日本なんて勉強から受動的な思考の人を生産する国だし。
でも、ちゃんとした自我とマナーがあるから殺人は大量に起こらない。

影響を受けるのは大いに結構だが、自分で物事を整理する力も同時に持たないと同じ事が起こるよ。

また同じ事件を起こさせたくないならば、ゲームを作成する表現者として芸術家として自分として表現したい事を、ゲームに心を籠めるしか無いんじゃないかな。

長くなったけど、言いたい事は自分でやれる限界は知れているが、自分しか出来ない事もあると言う事です。

何かゲームを作れる人は羨ましいです。

頑張ってこれからも表現してください。
Posted by あさやん at 2008年07月14日 17:41
とても悲しい事件です。
ゲームをやるものとして人事には思えない……
でも、どうか自分のことを無力に思わないで下さい。
Posted by 夢 at 2008年09月05日 00:28
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